
セレクションは夏から秋に動くので春には調べ始める
ジュニアユース(中学生年代のクラブチーム)のセレクションは、多くの地域で小学6年生の夏から秋に行われます。募集要項が出るのは、その1〜2か月前です。気づいたときには締め切りが近い、ということが起きやすい時期です。
小学6年生の保護者の方にいつもお伝えしているのは、トレセンの結果を待ってから調べ始めると間に合わないチームもある、ということです。選考の結果は本人の状態を知る材料になりますが、進路を決める合図としては遅すぎます。
おおまかな流れは次のようになります。地域やチームで前後するので、目安として見てください。
- 春(4〜6月)|通える範囲のチーム名を書き出す。この時期は名前を知るだけで十分です
- 夏(7〜8月)|練習会・体験会に足を運ぶ。多くのチームがこの時期に門を開けます
- 秋(9〜11月)|セレクション本番と合否。二次募集を出すチームもあります
- 冬(12〜2月)|中学の部活を含めて、最終的な進路を決める
春と夏にやるのは、受ける準備というより知る作業です。どこを受けるかが決まっていなければ、何を準備すればいいかも決まりません。まずは名前と場所を書き出すところからで構いません。

受けるチームは強さより入ったあとに起きることから選ぶ
チームを選ぶとき、最初に目に入るのは成績です。全国大会に出ている、リーグの上位にいる。分かりやすい情報なので、そこから絞りたくなります。
ただ、中学生と1対1で話していて増えるのは、技術の質問より環境の話です。小学生のうちは「あの場面でどうすればよかったか」という具体的なプレーの相談がほとんどですが、中学生になると内容が変わります。
球際で当たり負けする、体の入れ方が分からない、走れる体をどう作るか、食事はどうすればいいか。そこに、勉強との両立や、チーム内での立場の話が重なります。「なぜ自分がBチームなのか納得できない」「監督に聞きに行くと評価に響きそうで怖い」。この種の相談は、小学生からはほとんど出てきません。
小学6年生の相談にも、その前触れが出ています。自主練のメニューをどう組むか、目標をどう立てて続けるか。「ワイドに張りすぎだと言われる」といった、自分の役割についての相談も増えてきます。誰かが決めてくれる環境から、自分で決める環境へ移る途中にいるということです。
つまり中学からの3年間は、うまくなるかどうかと同じくらい、その環境で自分を保てるかどうかが問われます。チーム選びで見ておきたいのは、次の3つです。
そのチームがどんなサッカーをしているか
後ろからつなぐのか、前に速く運ぶのか。守備は前から行くのか、構えるのか。ここが本人のプレーと合っていないと、入ってから自分の良さが出しにくくなります。
お子さんの武器が「狭いところで前を向けること」なら、蹴って走るチームでは出番が限られます。逆に、球際の強さが武器なら、つなぐチームより前から奪いに行くチームのほうが評価されます。問われるのは、うまさより噛み合うかどうかです。
出場機会をどう配分する考え方か
チーム数と学年ごとの人数、リーグへのエントリー数を見ると、おおよその見当がつきます。3学年で1チームしか持っていないクラブと、学年ごとに2チーム持っているクラブでは、1年生が公式戦に出るまでの距離が違います。
練習会に行ったときに、コーチが交代をどう回しているかを見てください。固定のメンバーで回しているのか、全員が同じくらい出ているのか。その日の様子が、入ったあとの1年を先に見せてくれます。
3年間そこへ通い続けられるか
片道1時間の移動を週4回、3年間。ここは本人の気持ちだけでは持ちません。帰宅時間、宿題の時間、送迎の負担、費用。家族の生活に収まる範囲かどうかは、先に確かめておいたほうが後から困りません。
退会のご相談で多い理由も「学校とクラブが重なって時間が取れなくなった」です。気持ちより先に、生活のほうが限界を迎えます。
本人が自分で聞きに行ける空気があるか
中学に上がると、家庭からはチームの中身が見えにくくなります。練習を毎週見ていた保護者の方も、送迎だけになることが多いです。
1対1の場でも、中学生の相談は「監督にどう聞けばいいか」「Bチームの基準が分からない」といった、本人が自分で動くしかない話が増えます。選手の質問にコーチが答える時間があるかどうかは、入る前に見ておく価値があります。
調べ方は練習会に行く前と行った後で分けて考える
情報は、行く前に分かるものと、行かないと分からないものに分かれます。順番を間違えると、練習会が「雰囲気を見ただけ」で終わります。
行く前に分かること
- 公式サイトの活動日と活動場所|週に何回、どこで練習するか。通えるかどうかはここで決まります
- 所属リーグと直近の試合結果|相手と点差を見ると、どんな試合をしているかの見当がつきます
- SNSに出てくる練習の様子|メニューの中身より、コーチと選手の距離感が見えます
- 卒団後の進路|高校でも続けている子が多いかどうかは、育て方の結果です
ここまでを調べておくと、練習会で見るべきところが絞れます。「どんなチームですか」と聞かずに済むので、限られた時間を別の質問に使えます。
練習会で見るところ
見てほしいのは、コーチが何に対して声をかけているかです。ミスをした子にどう言うか、うまくいった場面で何を褒めるか。そこにチームの基準が出ます。3年間、その基準の中で過ごすことになります。
もうひとつは、途中から入った子の扱われ方です。体験に来た子に対して、既存の選手が声をかけるかどうか。そのチームが3年かけて何を育てているかが、いちばん出る場面です。
練習が終わったあとの5分も見てください。選手が自分から質問に行くか、コーチが残って話しているか。入ってからいちばん効いてくるのは、この時間です。

保護者が聞いていいこと
遠慮しなくて構いません。答えにくそうであれば、その場で深追いしなくて大丈夫です。どう答えたかまでが判断材料になります。
- 「1年生はどのくらい公式戦に絡みますか」
- 「うちの子はどのポジションで考えていただけそうですか」
- 「テスト期間の練習はどうなりますか」
- 「かかる費用は、月謝以外にどのくらいありますか」
当日までの準備は自分の武器を言葉にするところまで
セレクション当日にできることは、思っているより少ないです。技術は数週間では変わりませんし、その日の組み合わせも選べません。
動かせるのは準備のほうです。受けるチームがどんなサッカーをしていて、どのポジションにどんな選手を求めているのか。それを調べたうえで、自分の強みがどこで貢献できるかを整理しておく。この準備をしてから受けた子と、受けてから考えた子では、当日の落ち着きがまったく違います。
1対1で聞いていると、自分の武器を言葉にできない子がほとんどです。ここは家庭でも埋められます。左足のキックが正確なのか、体の入れ方が強いのか、狭いところで前を向けるのか。ひとつでいいので、本人の言葉で言える状態にしておいてください。
当日は、その場で組まれたチームでのゲームが中心になることが多いです。初めて組む相手といきなりプレーするので、ボールが来る回数は運に左右されます。そこで効くのが、自分から声をかけてチームをまとめようとするかどうかです。プレーの本数が少なくても、その働きかけは見られています。
前日までに、本人の手元に用意しておきたいのは次の4つです。
- 受けるチームの試合を1本は見ておく。映像がなければ、リーグの結果と相手を確かめるだけでも違います
- 自分の武器をひとつ、短い言葉にしておく
- そのチームのどのポジションで、自分の武器がどう使えるかを言えるようにしておく
- 集合時間と持ち物は、本人が自分で確認する。ここを親がやると、当日の頭の切り替えが遅れます
選考で見られている力そのものについては、トレセンの記事に詳しく書きました。見られている中身はセレクションでも大きくは変わりません。
- トレセンとは?選考で見られている力・受かる子と落ちる子を分ける「判断」|選考の仕組みから、当日のオフザボール、受かりやすいポジションの話まで扱っています。

怪我や不調でグラウンドに立てない時期にもできること
セレクションが近いのに怪我をした。この相談は1対1の記録でも上位に入ります。焦りが強いぶん、無理をして悪化させる子が出やすい時期でもあります。
走れない期間は、準備の時間に変えられます。私たちが実際にすすめているのは次のようなものです。
- 利き足と逆の足で、座ったままボールを触る
- 受けるチームの試合映像を見て、どのポジションに誰がいるかを書き出す
- 体幹のメニューを、痛みの出ない範囲で毎日少しずつ
- 自分の映像を止めて、その場面で何を考えていたかを言葉にする
同じ部位を繰り返し使うメニューは避けてください。動けるところだけを動かす、が原則です。
映像でチームを研究する時間は、練習に出られている子がなかなか取れない時間でもあります。結果として、当日いちばん相手を知っている選手になることがあります。
落ちたあとの一週間の過ごし方で次の一年が変わる
セレクションは、受かるかどうかを選考する側が決めます。そこは本人にも家庭にも動かせません。動かせるのは、結果が出たあとの数日です。
落選の直後にやってしまいがちな関わり方と、その理由については別の記事にまとめています。落ち込んでいる本人より先に、親のほうが立て直しを急いでしまう場面が多いところです。
- トレセン落ちた親がやりがちなNG対応集|落選直後の数日に、親が何をしてしまいがちかを並べました。
- トレセン落選でも大丈夫!伸びる子のリバウンドメンタル|立ち直るまでの順番を3段階に分けています。
もうひとつ、結果は聞きに行って構いません。「なぜ自分は選ばれなかったのか」は、聞いていい質問です。ただし時機は選んでください。発表の直後より、次の練習が一度終わったあとのほうが、相手も落ち着いて答えられます。
そして、今年の結果で終わりではありません。中学に入ってからチームを移る子もいますし、高校で伸びる子もいます。1回の結果で決まるものではないと本人が思えているかどうかが、翌週からの練習の質を変えます。
中学でも続ける理由を本人の言葉にしておく
進路の話は、どこに入るかに集まりがちです。ただ、入ったあとに効いてくるのは、本人が「なぜ中学でも続けるのか」を自分の言葉で持っているかどうかです。
中学に上がると、練習量も、周りのレベルも、勉強の量も変わります。理由が「みんなが続けるから」だけだと、最初の壁で折れやすくなります。
IPPOでも、小学6年生のうちに入った子と、中学に上がってから入った子では続き方が違います。中学からの入会は、部活や受験の予定に押されて短くなりがちです。小学6年生のうちに一度「なぜ続けるのか」を考えた子は、中学に入ってからも自分で理由を持っています。
保護者の方へのインタビューで、こんな言葉がありました。「チームだけだと、みんなと同じことしかやらない」。同じ練習をしていても、自分が何を伸ばしたいかを持っている子は、同じ時間から取り出すものが違います。
難しい話をする必要はありません。「中学でサッカーを続けて、どうなっていたい?」と一度聞いてみてください。答えが出なくても構いません。聞かれたこと自体が、本人の中に残ります。
場面別・次に読む記事
ここまでは、進路を考えるときの順番を書きました。ここからは、いま知りたいことに合わせて選んでください。
選考で何を見られているのかを知りたいとき
- トレセンとは?選考で見られている力・受かる子と落ちる子を分ける「判断」|選考の仕組みと、当日に見られているオフザボールまでまとめた1本です。
- 「うちの子、セレクション受かりますか?」と聞かれたときにいつも思うこと|技術テストのつもりで受けると外れる、という話をコーチの立場から書いています。
時期と準備の順番を確かめたいとき
- 新6年生の保護者へ。ジュニアユースのセレクションは“早めに動く”ことが大切です|動き出す時期を、6年生になった春の時点から逆算しています。
- トレセン選考会「小5」直前1か月でやること|直前の1か月を2週間ずつに分けた使い方です。セレクション前にもそのまま使えます。
落選のあとの関わり方に迷うとき
- トレセン落ちた親がやりがちなNG対応集|結果が出た直後の数日の話です。
- トレセン落選でも大丈夫!伸びる子のリバウンドメンタル|立て直しの順番を扱っています。
中学の環境そのものを考え直したいとき
- クラブ・部活・スクール…どの環境がわが子に合う?|3つの環境の違いを、本人の性格と合わせて整理しました。
- スクールを増やす前・チームを変える前に|子どものサッカー環境で迷った時の整理の仕方|環境を変える前に確かめたいことを並べています。
- IPPOを続けている中学生との対話――「考える時間」が残り続けている理由|中学に上がった選手が、何を考えながらプレーしているかをそのまま載せました。
女子選手の保護者の方へ
- 女子サッカーを応援する保護者が知るべき3つのこと|中学から先の環境が男子と違うので、分けて書いています。
まとめ
セレクションは、結果を選ぶ側が決める場です。家庭でできるのは、その前後の時間をどう使うかに絞られます。
- 春から夏は、受ける準備より先に、通える範囲のチームを知る作業に時間を使う
- チームは成績より、どんなサッカーをするか・出番の配分・3年間通えるかで選ぶ
- 当日までに、本人が自分の武器をひとつ言葉にできる状態にしておく
- 怪我で動けない時期は、相手を調べる時間に変えられる
- 結果が出たあとの数日の関わり方が、翌週からの練習を変える
その子のサッカーを決めるのは、どこに受かったかより、中学の3年間をどう過ごすかです。
オンラインサッカー塾IPPOでは、筑波大学蹴球部出身のコーチが、本人と1対1で「いま何を伸ばすか」を一緒に決めています。進路を控えた時期に、家庭の外にもう一人、話せる相手を置いておきたいときの伴走役です。
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