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サッカー未経験の親が家でできる関わり方|試合後の声かけと見方をコーチが解説

「夫婦でサッカーは未経験だったので、アドバイスの仕方がわからなかった」(保護者・中2・2026年2月)

「練習中に理解できているのか、アドバイスをしてあげられないことが多かった」(保護者・中1・2026年2月)

これは、私たちが保護者の方にお答えいただいたアンケートに書かれていた言葉を、そのまま引いたものです。私はオンラインサッカー塾IPPOでコーチをしていますが、初回の面談でいちばん多く聞くのも、同じ種類の言葉です。「何を見てあげればいいのか分からない」「口出ししたくないけれど、どう促せばいいのか」「本人は良かった場面の話をしたがるのに、親のほうは改善点を言いたくなってしまう」。レッスンの記録を見返すと、保護者の方に関する言及は75の記録・52名分ありました。子ども本人の相談と並ぶくらい、親の関わり方は繰り返し話題になります。

そして、ご家庭の悩みはだいたい似ています。サッカーをやったことがない。だから教えられない。教えられないから、何をしてあげればいいのか分からない。この記事は、その「何をすればいいのか」をひとまとめにしたものです。技術を教える方法は書いていません。未経験の保護者の方が今日から家でできることを、試合後の会話、試合の見方、家での練習、使う言葉の4つに分けて書きます。最後に、お子さんの状況ごとに読む記事を選べるように、これまで書いてきた記事を場面別に並べました。

親の役割は「教えること」ではありません

先に結論をお伝えします。サッカー未経験の保護者が家で担える役割は、大きく3つです。

  • 試合や練習で起きたことを、子どもが言葉にする相手になる
  • 子どもが自分で選ぶ場面を、家のなかに用意する
  • うまくいかない時期に、サッカー以外の部分を保つ

どれも、サッカーの知識を必要としません。技術指導はチームのコーチの役目ですし、そもそも週に何度も現場で見ている人にしかできないことです。保護者の方にしかできないのは、試合が終わって家に帰ってからの時間の使い方のほうです。ここは、コーチが誰も入れない場所です。

なぜ「言葉にする相手」が役に立つのか。私たちのレッスンでは、子どもが自分のプレーを説明できるようになることを重く見ています。コーチ陣が学年を問わず同じフィードバックを返すのが「言語化できていること自体が武器だよ」という一言です。自分が何を見て、何を考えて、なぜその選択をしたのかを言葉にできる子は、次に同じ場面が来たときに選び直せます。言葉にできないままだと、良いプレーが出ても再現できません。

保護者の方からは、こういう変化の報告をいただいています。「自分のプレー(なんでそのように動いたか)を説明できる」「授業が終わってから、学んだことを私に話してくれる」(保護者・小5・2026年2月)。この「話してくれる」相手が、家にいることが効きます。

入塾のお申し込みのときに「お子さんに期待すること」を書いていただくと、いちばん多いのは自分で考える力・言語化・伝える力です。技術の向上よりも多い。保護者の方が本当に求めているのは、子どもが自分で考えられるようになることだと思います。教えられる親になることは、その手段のひとつでしかありません。だとすれば、家で教えようとしなくて構いません。

試合のあとの声かけを、指摘から問いかけに変える

いちばん効果が出やすいのは、試合後の第一声です。ここを「今日のあれは◯◯だったね」という指摘から、問いかけに入れ替えます。未経験でも使える質問を3つ紹介します。全部使う必要はありません。どれか1つで十分です。

質問1「今日、うまくいった場面を1つだけ教えて」

最初にうまくいった場面を聞きます。理由は2つあります。ひとつは、子どもが話し出しやすいから。もうひとつは、本人が「良かった」と感じた場面がどこかを知ると、その子が何を大事にしているかが見えるからです。ドリブルで抜いた場面を挙げる子、味方が決めたパスを挙げる子、守って止めた場面を挙げる子。同じ試合を見ていても、挙がってくる場面は驚くほど違います。

岡田コーチがよく言うのは「10人中8人は自分の武器が分からない。残り2人のうち1人は使い方が分からない」という話です。自分の強みを自覚している小学生は、それだけで少数派です。うまくいった場面を毎回1つ聞いていくと、半年もすれば同じ種類の場面が繰り返し挙がってきます。それがその子の武器です。保護者の方は、この記録係になれます。

「良かったところなんて無い」と返ってくる日もあります。そのときは「じゃあ今日いちばん惜しかったのはどこ?」に切り替えてください。惜しかった場面の話は、本人にとっては「あと一歩だった話」です。責められている感じがしません。

質問2「あの場面、受ける前に何が見えてた?」

プレーの良し悪しを聞くと評価になりますが、何が見えていたかを聞くと事実の確認になります。この質問は、レッスンで私たちが子どもに投げている質問とほぼ同じです。「受ける前に見る」は、IPPOの指導記録で最も多く出てくる言葉のひとつです。見るものは2つに絞って伝えます。次に出したい味方と、自分についているマーク相手。この2つです。

家で聞くときも、2つに絞って構いません。「相手はどこにいた?」「味方は誰が見えてた?」。答えられなくても問題ありません。答えられないこと自体が、次に見るべきものを本人に教えます。実際、レッスンで同じ質問をすると、最初は「覚えてない」がほとんどです。それが2回、3回と続くうちに、試合中に見るようになります。あとで聞かれると分かっているから、見るようになる。順番はこちらのほうが自然です。

首を振る回数の目安として、塾では10秒で2回、少なくとも30秒に1回という数字を伝えています。見るものは味方・相手・スペースの3点です。数を数えるのは親の役目ではありませんが、「今日、首振れてた?」と聞くだけで、本人は次の試合で思い出します。

質問3「次の試合、1つだけ決めるとしたら何にする?」

最後に、次にやることを本人に決めてもらいます。ここを親が決めてしまうと、子どもの課題が親の課題にすり替わります。1つに絞るのは、判断を速くするためです。長坂コーチと岡田コーチが繰り返し伝えているのが「基準(自分ルール)を1つ持つ」という考え方で、指導記録でいちばん多く出てくる言葉です。たとえば「ここにDFがいたらワンタッチで返す」「ここが空いていたら前を向く」。試合中に迷わないための、自分だけのルールです。

菅野コーチと高橋コーチは、これを「判断は事前に2択まで、受けた瞬間は実行だけ」と表現します。受けてから考えると遅い。だから受ける前に2択まで絞っておいて、受けた瞬間はもう実行する。ご家庭で決めた「次の1つ」は、その事前の2択を減らす作業にあたります。

決まったことは、メモに書いてもらうか、親が覚えておいてください。次の試合の前に「今日の1つ、何だっけ?」と一度だけ確認します。試合中は何も言いません。

聞かない日があっていい

毎試合これをやる必要はありません。負けた直後、悔しくて黙っている日に質問を重ねると、会話そのものが嫌になります。実際、アンケートには「母親にあれこれ言われるのは嫌そうだった」(保護者・小5・2026年2月)という声もありました。帰り道は黙って、翌日の夕食のときに1つだけ聞く。そのくらいの間隔でも、続けば十分に効きます。

試合の見方を変える。ボールから離れた場所を見る

サッカー未経験の保護者が試合を見るとき、目はどうしてもボールを追います。ボールの周りで起きていることは技術の巧拙が出る場所なので、経験がないと評価しづらい。ところが、ボールから離れた場所で起きていることは、経験がなくても見えます。しかも、小学生年代でいちばん伸びしろがあるのはそちらです。見る場所を3つに絞ってご紹介します。

ボールに触っていない時間に何をしているか。差はそこに出る
ボールに触っていない時間に何をしているか。差はそこに出る

視点1 受ける前に、顔が上がっているか

ボールが自分のところに来る前の1〜2秒、その子の顔が上がっているかを見ます。下を向いたままボールを受けると、受けてから初めて周りを探すことになり、その時点で相手が寄せてきます。顔が上がっている子は、受ける前に選択肢を持っています。上手いか下手かではなく、顔が上がっているかどうか。これは未経験でも判定できます。

見えたことは、そのまま伝えて構いません。「今日、受ける前に何回か顔上がってたね」。技術の評価をしていないので、間違えようがありません。

視点2 ボールが逆サイドにあるとき、どこに立っているか

味方が反対側でボールを持っているとき、お子さんがどこに立っているかを見てください。立ち位置の判定基準として、私たちは「パスコースが見える場所にいるなら、その位置は正しい」と伝えています。味方とのあいだに相手が入っていて、ボールが見えない位置に立っていたら、パスは来ません。逆に、相手から少し離れていて、味方からこちらが見える位置にいれば、ボールは来ます。

小学生の相談でいちばん多い質問のひとつが、ゴールキックのときにどこに立てばいいか分からない、というものでした。前に出るとカットされるし、後ろに下がるともらえない。答えは相手の位置によって変わるので、家では「今日、パスもらえる場所に立ててた?」と聞くくらいがちょうどいい距離感です。

視点3 ボールを失った直後、最初の3歩がどこを向いたか

自分がボールを取られた瞬間、あるいは味方が取られた瞬間、お子さんの体がどちらを向いて動き出したか。止まってしまう子、ボールを見ているだけの子、自陣に走り出す子で分かれます。ここは気持ちの問題に見えますが、実際には何をすればいいか分かっていないことが多い。守備について岡田コーチが伝えているのは「守備の目的はボールを奪うことではなく、ゴールを守ること」です。取り返しに行くだけが正解ではありません。

3つとも、うまい・へたの判定をしていません。事実の観察です。事実だけを持ち帰ると、家での会話が指摘になりにくくなります。

家の練習に「選ぶ余地」を入れる

自主練を見るとき、メニューを決めて、回数を数えて、できたかどうかを確認する。この形は分かりやすいのですが、子どもが選ぶ場面がひとつもありません。試合中に必要なのは、決められたことを正確にやる力に加えて、その場で選ぶ力です。岡田コーチは判断の手順を「止まる→見る→選ぶ」という3語で教えています。家の練習にも、この「選ぶ」を少し混ぜます。

メニューを2つ用意して、本人に選ばせる

親が1つ用意して、それをやらせると練習は作業になります。2つ用意して「今日はどっちにする?」と聞くだけで、子どもの側に理由が生まれます。どちらを選んでも構いません。選んだあとに「なんでそっちにした?」と一度聞ければ十分です。

回数ではなく、今日の基準を1つ決めてもらう

「30回蹴る」を目標にする代わりに、今日は「顔を上げてから蹴る」を守る。回数は守れたかどうかしか残りませんが、基準は試合に持っていけます。前の章で書いた「基準(自分ルール)を1つ持つ」を、家の練習でも使うということです。

週に1回、子どもが親に説明する時間をつくる

5分で構いません。今週覚えたこと、次の試合でやること、うまくいかなかったことを、子どもが親に説明します。教える側に回ると、分かっているつもりだった部分が本人にも見えます。アンケートでも「レッスンを受けて満足している気がする」「テストして理解しているか振り返らせてほしい」というご指摘をいただきました。これは私たちが受け止めるべき課題ですが、同じことは家庭でも起こります。聞いて終わり、やって終わりにしないための仕掛けが要ります。

選ぶ余地を入れるのは、放っておくこととは違います。時間と場所は大人が決めて、中身の一部を子どもに渡す。この配分がちょうどいいと感じています。

言いがちだけれど、逆に働いてしまう言葉

オンライン授業では、コーチと1対1で試合の場面を振り返る
オンライン授業では、コーチと1対1で試合の場面を振り返る

ここから先は、保護者の方を責めるつもりで書いていません。私自身、指導のなかで言ってしまって、後から効かないと分かった言葉ばかりです。言い換えの例と一緒に並べます。

「ミスしないで」

長坂コーチが子どもたちに話すときによく使うのが「意識を外側に向ける」という言い方です。ミスをしないようにと考えると、意識が自分の体や足の形といった内側に向きます。内側に向いている状態では、周りが見えません。運動学習の研究で分かっていることとして、私たちはこれを子どもにも説明しています。言い換えるなら「相手の位置だけ見ておいで」。やることを1つ渡すほうが、ミスは減ります。

「なんであそこでパスしなかったの」

結果を見てから過去を評価する質問なので、子どもは答えようがありません。本人が受ける前に何が見えていたかを聞くほうが、次につながります。「あのとき、味方どこにいるように見えてた?」に置き換えられます。

「もっと声出して」

声が出ない子の多くは、何を言えばいいのかが分かっていません。出したくないわけではありません。アンケートにも「試合中に声が出せない 自分に自信が持てない」(子ども・小5・2026年2月)という声がありました。同じご家庭の保護者の方は、数か月後に「試合中に声が出せるようになった。強気なプレーができるようになった」と書いてくださっています。変わったのは性格ではありません。言う中身を持ったことです。家では「今日、1回だけ言うとしたら何て言う?」と、具体的な一言を一緒に決めておきます。

「◯◯くんはできてるよ」

比較は、比較された相手がいるあいだしか効きません。しかもサッカーは、同じポジションでも求められることが違います。比べる相手は、3か月前の本人です。前の章の「うまくいった場面を1つ聞く」を続けていると、比べるための材料が自然に溜まります。

試合中、タッチラインの外から出す指示

これがいちばん難しいところだと思います。声をかけたくなりますし、悪気もありません。ただ、子どもの側からすると、コーチの指示と親の指示と自分の判断が同時に来ることになります。判断は事前に2択まで、という話と正面からぶつかります。試合中に伝えたいことは、試合が終わってからの1つの質問に変えるのが、結果的にいちばん届きます。

親がサッカーの言葉を少し覚えると、家の会話が変わる

ボールをもらう前に確認する3つ:味方の様子・マークしてくる相手・次に出す味方(IPPOサッカーIQ第37回)
ボールをもらう前に確認する3つ:味方の様子・マークしてくる相手・次に出す味方(IPPOサッカーIQ第37回)

未経験であることの不便さは、技術を教えられないことより、コーチの話が分からないことのほうに出ます。「サッカーの基礎知識がなく、チームのコーチの話が理解できていない」(保護者・小5・2026年2月)、「部活で先生の指導の意味が理解しきれないこともあったので、サッカーの知識をつけられたら良いと思いました」(保護者・中3・2024年4月)。どちらもアンケートにあった言葉です。

反対に、用語が分かるようになった方からはこう届いています。「用語を理解できるようになり、コーチの指示の理解度が増した」(保護者・小5・2026年2月)。覚えるのは4つで足ります。

  • 半身(はんみ)… ボールと相手の両方が同時に見える体の向き。前を向いて受けるための基本
  • パスコースが見える位置 … 立ち位置が正しいかどうかの判定基準。味方から自分が見えているか
  • 中を切る … 1対1の守備で、相手を中央ではなく外へ誘導すること
  • 基準(自分ルール)… 試合中に迷わないために、事前に決めておく自分だけの決めごと

この4つを知っていると、子どもが「今日は半身で受けられた」と言ったときに、話を続けられます。用語は会話の入口で、覚えること自体が目的ではありません。

それでも足りない場面は出てきます。「どんなチームでもプレーの解説に最長でも5分くらいしか時間を使えない」(保護者・小5・2026年5月)という声をいただいたことがあります。現場のコーチは20人、30人を同時に見ているので、1人のプレーを詳しく見る時間はどうしても限られます。そこを詳しく見られるのは保護者の方だけです。そのために効くのは知識量より、質問の型のほうだと考えています。

場面別・次に読む記事

ここまでは、どのご家庭にも当てはまる部分を書きました。ここからは、いま起きていることに合わせて選んでください。同じ「親の関わり方」でも、試合に出られない時期と、やめたいと言われたときでは、やることが変わります。

試合に出られない・選ばれないとき

「やめたい」「休みたい」と言われたとき

伸び悩んでいるように見えるとき

緊張しやすい・失敗を怖がる・声が出ないとき

見に行き方・帰り道・コーチとの関係が気になるとき

未経験の親が、基礎から知っておきたいとき

ご家庭で一緒にできることを探しているとき

まとめ

サッカーをやったことがなくても、家でできることはあります。試合のあとに、うまくいった場面を1つ聞く。次の試合で守る1つを本人に決めてもらう。試合を見るときは、ボールから離れた場所に目をやる。家の練習には、子どもが選ぶ場面を少し混ぜる。どれも知識を必要としません。

2024年4月にお願いしたアンケートで、保護者の方が読みたい記事として最も多く挙げてくださったのが、親の関わり方・声かけ・コーチングの仕方でした(同じくらい多かったのが成長期の体・食事)。それだけ、迷っている方が多いテーマです。私たちも、答えを1つに決められているわけではありません。

ただ、レッスンの記録を通して分かってきたことはあります。自分のプレーを説明できる子は、次に同じ場面が来たときに選び直せます。その説明を最初に聞く相手は、たいてい家族です。教える人がいなくても、聞く人がいれば子どもは考えます。今日の帰り道、質問を1つだけ用意してみてください。

この記事を書いた人

岡田俊祐

岡田 俊祐オンラインサッカー塾IPPO 代表コーチ

レノファ山口U15 → 芝浦工業大学柏高校 → 筑波大学蹴球部 → NAGAREYAMA F.C.。全国の小中学生に「サッカーIQ(判断力)」をオンラインで教えています。

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