
「サイドでボールを持つと、あっという間に3人に囲まれて取られる」「コーチに『持ちすぎ』と言われてから、すぐパスを出すようになった」。小学4年生前後になると、こうした相談が増えてきます。
取られる場面を見ると、ドリブルの練習を増やしたくなるものです。けれど、パーソナル相談で子どもの話を聞くと、原因は足技より手前、受ける前の準備にあることが多いのです。
この記事では、囲まれる前に何を見て何を決めておくか、家でできる練習、親が試合で確かめる見方をまとめます。
囲まれて取られるのは、受けてから考えているから
ボールが足元に来てから周りを見て、どうするかを考える。その1〜2秒のあいだに、相手は距離を詰めてきます。サイドは片側がタッチラインなので逃げられる方向が少なく、相手にとっては囲みやすい場所です。
受けてから考える子は、決まるまでボールを持ち続けます。持つ時間が長いほど相手は集まり、気づけば前も横もふさがっている。これが「持ちすぎ」の正体です。
トラップが足元に止まると、もう1タッチ遅れる
もう1つの原因がトラップです。ボールを足元にぴたりと止めると、次に動かすまでにもう1タッチかかります。足元に入りすぎる、逆に大きくなって相手の方へ転がる。どちらも、置く場所を決めずに止めているときに起きやすいミスです。
コーチが子どもに伝えているのは、トラップそのものを目的にしないことです。止め方より「次にどこへ出すか」に意識を向けると、置く場所が自然と変わってきます。
取られる子が「ドリブルが下手」とは限らない
囲まれて取られる子が、ドリブルが下手とは限りません。むしろ低学年のころにドリブルで何人も抜いてきた子ほど、この壁に当たります。
低学年のうちは、ドリブルだけで解決できる場面がたくさんあります。そうして育った子は、どの場面でも仕掛ける一辺倒のプレーになりがちです。学年が上がって相手の寄せが速くなると、それが通用しなくなっていきます。技術が活きるのは、「いつ仕掛けるか」を自分で決められるようになってからです。

受ける前に、2択まで決めておく
囲まれないための考え方はシンプルです。ボールが来る前に、次のプレーを決めておく。判断はその場でせず、事前に2択まで終わらせておき、受けた瞬間は決めた方を実行するだけにします。
見るのは「相手との距離」と「来るかどうか」
受ける前に見るものは、まず2つで足ります。いちばん近い相手がどのくらい離れているか。そして、その相手が自分に向かって来ているかどうかです。
相手が遠くて動いていなければ、前を向いて運ぶ時間があります。近い、あるいはこちらへ走り出しているなら、受けてから考える余裕はありません。見るものを増やすのは、この2つが見えてからで十分です。その先の見る順番はサッカーで周りを見る練習法で説明しています。
基準を1つ持つと、迷う時間が消える
2択を決めやすくするために、コーチは子どもと一緒に「自分ルール」を1つ作ります。たとえば「相手がもう寄せて来ていたらワンタッチで味方へ、来ていなければ前へ運ぶ」。ルールが1つあるだけで、受けた瞬間に迷う時間がなくなります。
「ドリブルかパスか」で迷う子にも、同じ考え方が使えます。目的はゴールを奪うこと。だから、どちらがゴールに近づくかで選びます。相手を1人かわした先にスペースがあれば運び、なければ離します。
トラップは、次に進む方向へ置く
2択が決まっていれば、トラップで置く場所も決まります。運ぶと決めたなら、相手のいない側の少し前へ。足先だけで触るより、体ごとボールについていくつもりで置くと、そのまま次のタッチで進めます。
1タッチ目を相手の逆へ置く。それだけで、1人目の寄せは外せます。
仕掛けると決めた場面では緩急をつける
1〜2人は抜けるのに、最後の1人に止められる。この相談もよく出ます。多いのは、抜いたあとにスピードが上がりきって、動きが読まれている場合です。ゆっくり近づき、相手が動いた逆へ一気に出る。速さに変化があると、相手は反応しにくくなります。
家でできる練習と声かけ

どれもボール1個と、親が1人いればできます。チーム練習のない日に10分ほどで回せる内容です。
- 「右」「左」で置き場所を決める(5分・ボール1個):親が3〜4メートル離れてボールを転がし、転がす直前に「右」「左」と声を出します。子どもはその方向の体の少し前へ1タッチで置き、次のタッチで運びます。慣れたら声を遅らせ、ボールが来る途中で決める練習にします。
- 寄せるか止まるかを見て2択(5分・ボール1個):親がパスを出したあと、子どもに向かって走るか、その場で止まるかを選びます。寄せて来たらワンタッチで親に返し、止まっていたら前へ運ぶ。受ける前に親の動きを見られているかを確かめます。
- 試合前の声かけを1つに絞る(1分):「今日は、受ける前に相手が来てるかだけ見よう」と伝えます。「持ちすぎないで」と言うと、子どもはボールを持つこと自体をためらうようになります。
試合のあとは、「なんで取られたの」より「受ける前、相手がどこにいたか見えてた?」と聞いてみてください。答えが「見てなかった」でも、次に何をすればいいかは本人にも分かります。
親が試合で確かめる見方
取られた回数は相手の強さに左右され、上達の目安になりにくいものです。見るのは、受ける前と囲まれた瞬間の行動です。
- ボールが来る前に、首を振って周りを確認しているか
- 囲まれたときに、ボールを「離す」判断が1回でも出たか
- 1タッチ目が足元に止まらず、相手のいない側や前へ出ているか
2つ目は特に見ておきたいところです。ドリブルで解決してきた子にとって、ボールを離すのは勇気が要ります。1回でもその判断が出たら、パスが通ったかどうかに関係なく「あそこで離したの、よかったね」と言葉にしてあげてください。
練習には通っているのに、試合での変化がなかなか見えないこともあります。囲まれる場面以外も含めて伸び悩みの原因を整理したいときは、サッカーが上達しない小学生に共通する3つの原因が参考になります。
パーソナル相談で子どもから出た質問
IPPOのパーソナル(コーチと1対1で話す相談の時間)で、子どもたちから実際に出た質問と、コーチの答えです。学年の目安とポジションは質問した子のものです。
Q. サイドでボールを持つと、3人に囲まれて取られます。コーチには「持ちすぎ」と言われました(中学年・サイドの選手)
囲まれてから抜け出す方法を探すより、囲まれる前に決めておきましょう。ボールが来る前に、近い相手との距離と、その相手が向かって来ているかを見ます。来ているなら離す、来ていないなら運ぶ。ドリブルだけに頼る選手は、学年が上がると通用しなくなります。いつ仕掛けるかを決められれば、今のドリブルがもっと活きます。
Q. ボールを受けたとき、ドリブルかパスか毎回迷います(高学年・中盤の選手)
迷うのは、受けてから決めようとしているからです。判断は受ける前に2択まで終わらせて、受けた瞬間は実行するだけ。基準は、どちらがゴールに近づくかです。「ここに相手がいたらワンタッチ、ここが空いていたら前進」のように、自分のルールを1つ持っておくと速く決められます。
まとめ
- 囲まれて取られる原因は、ドリブルの技術より「受けてから考えている」ことにある場合が多い
- 受ける前に「相手との距離」と「来るかどうか」を見て、2択まで決めておく
- トラップは足元に止めず、次に進む方向(相手の逆・少し前)へ置く
- 「いつ仕掛けるか」を決められるようになると、ドリブルの技術が活きる
- 試合では取られた回数より、受ける前の首振りと「離す」判断を見る
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