応援したい親と、見られたくない子。どちらかが間違っているわけではありません
「今週の試合、見に来なくていいよ」
週末の予定を確認している時、突然子どもから、
「今週の試合、見に来なくていいよ」
と言われた。
これまで毎週のように応援へ行っていた保護者からすると、少し寂しい言葉かもしれません。
「なんで?」
と聞いても、
「別に」
「なんとなく」
としか答えてくれない。
もしかすると、
「最近あまり試合に出られていないからかな」
「親に見られるのが恥ずかしいのかな」
「何か嫌われるようなことをしたかな」
と、いろいろ考えてしまうこともあると思います。
IPPOでも、小学校高学年から中学生くらいになると、サッカーだけでなく親との距離感そのものが少しずつ変わっていく子どもたちを見ます。
幼い頃には、
「今日の試合絶対見に来て!」
と言っていた子が、ある時から、
「別に来なくていい」
と言うようになる。
でも、それは必ずしも「応援してほしくない」という意味ではありません。
親に見られていることで、力が出る子もいれば緊張する子もいる
試合会場で保護者の姿を見つけると安心する子がいます。
「お父さん、お母さんが見てくれている」
ということが力になる。
一方で、逆の子もいます。
親がいると、
「ミスしたところを見られたくない」
「活躍しなきゃ」
「帰った後に何か言われるかな」
と考えてしまう。
もちろん、保護者が実際にプレッシャーをかけているとは限りません。
何も言っていなくても、子ども自身が勝手に意識してしまうこともあります。
特に小学校高学年から中学生になると、周囲から自分がどう見られているかを以前より気にするようになります。
コーチ。
チームメイト。
友達。
そして、親。
それぞれの視線を意識しながらプレーするようになる子もいます。
だからこそ、
「見に来ないで=親が嫌い」
とすぐに捉える必要はありません。
サッカーに集中するために、少し距離が欲しいのかもしれません。
まず「なんで?」と問い詰めなくてもいい
突然そう言われたら、理由を知りたくなると思います。
ただ、
「なんで来てほしくないの?」
「今までずっと行ってたじゃん」
「応援してるだけなのに」
と続けてしまうと、子どもは説明すること自体が面倒になってしまうことがあります。
そんな時は、
「分かった。そういう時もあるよね」
くらいで一度受け止めても構いません。
そして少し時間が経った時に、
「ちなみに、見られてるとやりにくかったりする?」
と軽く聞いてみる。
すると、
「ミスすると気まずい」
「試合後にいろいろ聞かれるのが嫌」
「友達に親がいるところ見られるのが恥ずかしい」
など、本当の理由が出てくるかもしれません。
その理由によって、保護者ができることも変わります。
「見に行くこと」と「応援すること」は同じではない
子どものサッカーを応援するというと、試合会場へ行くことをイメージしやすいと思います。
もちろん、現地で応援することも一つの形です。
でも、それだけではありません。
朝早く起きて送り出す。
ユニフォームの準備を手伝う。
遠征へ送迎する。
帰ってきたらご飯を用意する。
「どうだった?」と聞かずに、疲れている日はそっとしておく。
必要な時に話を聞く。
これも全部、子どものサッカーを支える行動です。
試合を見に行かなくなったからといって、サポートしなくなるわけではありません。
むしろ成長とともに、応援の形が少しずつ変わっていくこともあります。
子どもが自分だけのサッカーを持ち始める時期
幼い頃は、サッカーが親子共通のものになりやすいものです。
一緒に練習する。
一緒に試合へ行く。
帰り道にサッカーの話をする。
それは、とても大切な時間です。
しかし成長していく中で、少しずつ、
「自分のサッカー」
になっていきます。
自分で目標を決める。
自分でコーチと話す。
自分で失敗と向き合う。
自分でチーム内の人間関係をつくる。
これは、決して親から離れてしまうということではありません。
むしろ、選手として自立していく上では自然な変化でもあります。
IPPOでも、年代が上がるにつれて、コーチと選手本人が直接話し、自分の課題や考えを言葉にする機会を大切にしています。
いつまでも大人が間に入って答えを出すのではなく、少しずつ本人に任せていく。
サッカーは、その練習ができる場所でもあります。
ただし、本当に困っているサインは見逃さない
もちろん、
「見に来ないで」
と言われたら、必ず距離を置けばいいという話でもありません。
急にサッカーの話をしなくなった。
練習へ行くこと自体を嫌がるようになった。
試合前になると極端に不安そうになる。
チームメイトやコーチについて何かを隠しているように感じる。
以前楽しそうだったのに、明らかに様子が変わった。
こうした変化が重なっている場合には、単なる親離れではなく、チームの中で何か困っている可能性も考える必要があります。
そんな時も、
「何かあったでしょ?」
と答えを迫るより、
「最近ちょっとしんどそうに見えるけど、大丈夫?」
と伝えておく。
すぐに話してくれなくても、
「困った時には話していい」
という入り口を残しておくことが大切です。
「見に行っていい?」と聞ける関係にする
保護者としては、
「じゃあ、もう二度と見に行かない」
と極端に考える必要もありません。
例えば、
「今度の大会は見に行ってもいい?」
と聞いてみる。
「来てほしい」
と言うかもしれません。
「今回はいい」
と言うかもしれません。
それでいいと思います。
大切なのは、親が当然のように入り込むのでもなく、完全に関心をなくすのでもない距離感です。
「応援している。でも、あなたのサッカーだから、必要な距離は尊重するよ」
という姿勢です。
この安心感があるからこそ、子どもが本当に困った時には、また親を頼ることができます。
親が少し離れることで見えてくる成長もある
ずっと近くで見ていると、どうしても細かい変化が気になります。
今日の出来。
スタメンかどうか。
何分出場したか。
何回ボールを失ったか。
コーチから何を言われていたか。
でも少し距離を置いてみると、
「自分から試合の準備をするようになったな」
「帰ってきて、自分から今日の試合について話してきたな」
「コーチに自分で質問できるようになったんだな」
と、プレーとは違った成長が見えてくることがあります。
サッカーを通して育つのは、技術や戦術だけではありません。
自分のことを自分で考え、自分で行動する力も、その一つです。
まとめ
「試合、見に来ないで」
そう言われると、保護者としては少し寂しいかもしれません。
せっかくここまで応援してきたのに。
成長を近くで見ていたいのに。
そう思うのは自然なことです。
でも、子どもが成長していく中では、親子のちょうどいい距離も変わっていきます。
毎試合そばで見ることが支えになる時期もあれば、少し離れて任せることが支えになる時期もあります。
IPPOでは、最終的には子ども自身が、
自分で考え、自分で選び、自分のサッカーに向き合える選手になること
を大切にしています。
そのためには、大人が教えることだけでなく、少しずつ任せていくことも必要です。
見に行かない日があっても、応援していないわけではありません。
子どもが振り返った時に、
「ちゃんと見守ってくれている」
と思える距離にいること。
子どもの成長とともに、そんな新しい応援の形を探していくことも、保護者にできる大切なサポートなのだと思います。

