
試合に出られない…その気持ちにまず寄り添う
一生懸命練習してきたのに、いざ試合では出番がない。
ベンチで終わる時間が続くと、子どもは少しずつ自信を失い、「自分は必要とされていないのでは」と感じてしまうことがあります。
親としては、「頑張れば次は出られるよ」「大丈夫、見てくれてるよ」と励ましたくなるもの。でも、そうした言葉が子どもに届かないと感じた経験はありませんか?
そんなときに大切なのは、まず子どもの悔しさや悲しさに寄り添うことです。
「出られなくて悔しかったよね」
「頑張ってきたからこそ、つらい気持ちになるよね」
そんなふうに、言葉で共感することで、子どもは「わかってくれる人がいる」と感じられます。
感じている気持ちそのものを否定せずに、ただ一緒に受け止める。
それだけで、子どもにとっては大きな支えになります。
また、あらためて伝えたいのは、試合に出られないことが「無意味」な時間ではないということ。試合に出ていないからこそ得られる経験や気づきがあります。その視点を持つことで、子どもは次の一歩を自分の力で踏み出せるようになります。
出られない時期こそ“伸びしろ”が育つタイミング
ピッチの外から試合を見る経験は、選手にとって決してマイナスばかりではありません。
外からチーム全体を観察する時間は、視野や理解を広げるチャンスでもあります。
試合中にコーチがどんな意図で選手を交代させるのか。どの場面で誰がどう動いているか。ピッチの中にいるときには気づけなかったことが、ベンチからなら見えることがあります。
また、どんなときも練習に取り組む姿勢は必ず誰かが見ています。
試合に出られるかどうかだけが評価の基準ではありません。普段の取り組み、仲間との接し方、声かけ、準備の行動——そうした一つひとつが、次のチャンスに確実につながっていきます。
さらに、ピッチに立たずとも、チームに貢献できる方法はたくさんあります。
声を出して仲間を励ます。試合前の準備を手伝う。交代選手のサポートをする。そうした小さな行動は、チームの雰囲気を良くし、信頼を高める大切な役割です。
「出られないからこそ、今できること」に気づき、行動できる子は強い。
そうした経験は、将来ピッチに立ったときに確実に自信と成長につながります。
親がかける“前向きな言葉”と“焦らせない姿勢”
子どもが試合に出られない状況が続くと、親としてもつい気になってしまいます。
「なんで出られないんだろう?」「次は出られそう?」
そう尋ねたくなるのも自然なことです。
でも、子ども自身が一番悩んでいることを忘れてはいけません。
そこにさらにプレッシャーをかけてしまうと、子どもは「わかってもらえない」と感じてしまうことがあります。
だからこそ、親は焦らせるよりも、支える存在でありたい。
「がんばってる姿、ちゃんと見てるよ」
「いつチャンスが来ても大丈夫なように準備してるんだね」
「出られなくても、あなたの頑張りには価値があるよ」
そんな言葉は、子どもにとって力になります。
結果だけでなく、努力や姿勢を認めてあげること。
それが、子どもが自信を取り戻すきっかけになります。
また、「焦らなくていい」「今は成長のときだよ」といった言葉を添えることで、“待つ”という姿勢に意味があることも自然と伝わっていきます。
おわりに:出られない時間にも、必ず意味がある
試合に出られない時間は、本人にとってはつらいものかもしれません。
でも、その時間には“人として、選手としての土台を育てる要素”がたくさん詰まっています。
仲間を信じて声をかけること。地道に努力を続けること。目立たない場所でも役割を果たすこと。そうした力は、のちにピッチで活きるだけでなく、その子の人生そのものを支える力になります。
親にできることは、急かさず、信じて待ち、声をかけてあげることです。
出られなくても、腐らず、諦めず、自分の中にある価値を信じられるように。
そんな子どもを支える親の存在が、何よりの“出場機会”への準備になります。試合に出ることがすべてじゃない。
そのことを親が信じていれば、子どももきっと、自分の価値を信じて進んでいけるはずです。