
「寄せた瞬間に、チョンとかわされる」「足は遅くないのに、1対1になると簡単に抜かれる」。試合を見ていて、そう感じたことのある保護者は少なくありません。
本人も困っています。コーチに直接相談する時間でも、「寄せる距離と止まる位置が分からない」「いつプレッシャーに行けばいいの?」という質問が繰り返し出てきます。
原因の多くは、足の速さや気持ちより、寄せるタイミングと止まり方にあります。この記事では、詰めるタイミングと止まる距離、抜かれたあとに優先すること、家での練習、親が試合で見るポイントをまとめます。
かわされる子は、走ったまま相手の前に着いている
かわされる場面をゆっくり再生すると、守る子は勢いよく走って近づき、そのまま足を出しています。相手はボールを横へ少しずらすだけです。体が前に流れているので、止まって向きを変えるまでの一瞬で置いていかれます。
「チョン」と抜かれるのはこの一瞬です。走りながら出した足は、かわされたらもう戻せません。
もう一つの原因は、寄せ始めが遅いことです。相手がボールを収めて顔を上げてから寄せると、相手はもう次のプレーを選べます。詰めきれないまま近づくので一発で取りに行くしかなくなり、そこを狙われます。
足りないのは「早く詰める」と「止まる」の2つで、どちらもタイミングとして教えられます。
詰めるのは、ボールが転がっている間

距離を一気に縮められるのは、パスが転がっている間です。相手はまだボールに触れません。パスが出た瞬間に走り出し、ボールが相手の足元に届くころには止まっている。これが寄せ方の基本です。
もう一歩詰めるチャンスは3つの瞬間
止まったあとは、相手がボールの扱いに気を取られる瞬間を待って、もう一歩詰めます。
- トラップした瞬間:ボールが足から少し離れ、相手の目線が足元に下がる
- ターンした瞬間:相手は体の向きを変えている途中で、前がよく見えていない
- 浮き球を処理する瞬間:目線が上を向き、落ちてくるボールに合わせるので手一杯になる
相手が前を向き、顔が上がっているときは飛び込みません。止まって構え、上の3つのどれかが来るのを待ちます。子どもには「相手が下を向いたら行く」と言うと伝わります。
止まる距離は「足がぎりぎり届く」ところ
近すぎると、横にボールを出されたときに向きを変える余裕がありません。遠すぎると、相手は前を向いて自由に運べます。足を伸ばせばボールに届く距離で止まるのが目安です。
この距離は体の大きさや足の速さで違うので、コーチは「自分の間合いを見つけよう」と伝えています。練習で何度も止まり、届く距離を体で覚えます。
半身で構えて、中を切る
止まったら、へそを相手の真正面に向けず、少し斜めに構えます。この半身の姿勢だと、相手とボールを同時に見ながら、横にも後ろにも動き出せます。
次に、ゴールに近い内側に立って中へのコースを切り、相手を外へ行かせます。「中を切ると縦を空けてしまう」と悩む子もいますが、外の縦はゴールから遠く、味方もカバーに来やすい方向です。奪えればいちばんですが、奪えなくても相手の行き先を外に限定できれば、守備の役目は果たせています。
サイドの選手はこの場面が多くなります。サイドバックの判断はサイドバックに向いてる子の特徴と、伸ばすべき判断力にまとめました。
抜かれたあとは、すぐ追いかけて時間を稼ぐ
どれだけ準備しても、1対1では抜かれることがあります。差が出るのは、抜かれたあとの数秒です。
抜かれてその場で立ち止まると、相手は前を向いたままゴールへ向かえます。すぐ振り返って追えば、相手は後ろを気にしながら運ぶので、シュートやパスが少し遅れます。その間に味方が戻れます。
追いかけるときは、相手の利き足側から戻るのがコツです。得意な足でボールを持ち直しにくくなり、蹴れる方向も限られます。
数で負けているときは、奪いに行かない
攻め上がったあとにカウンターを受けると、2対1や3対2になります。ここで飛び込んでかわされると、そのまま失点につながります。
優先するのは、まず抜かれないこと、そして味方が戻るまで時間を稼ぐことです。後ろのキーパーも数に入れれば、2対1は2対2と考えられます。ボールを持った相手と、パスを受けそうな相手の間に立ち、下がりながら距離を保ちます。
このとき見るのはボールだけではありません。もう一人の相手と、味方がどこまで戻っているかです。何をどの順番で見るかはサッカーで周りを見る練習法で詳しく書いています。
家でできる1対1の守備練習

どれもボール1個と親が1人いればでき、3つで15分ほどです。
- パスに合わせて寄せて止まる(5分・ボール1個):8メートルほど離れて立ちます。親は自分の2メートルほど前へボールを転がし、追いついてトラップします。子どもは転がり始めた瞬間に走り出し、親がトラップする前に、足がぎりぎり届く距離で止まります。走ったまま着いたらやり直しです。
- 半身で外へ誘導する(5分・ボール1個と目印2つ):ペットボトルを2本置き、片方を「中」、もう片方を「外」と決めます。親がゆっくりドリブルし、子どもは半身で中を切って外へ行かせます。奪えなくても、10秒抜かれなければ成功です。
- 体を入れて先にボールに触る(3分・ボール1個):詰めたあと奪い切るための練習です。横に並び、親が前へボールを転がします。子どもは並走しながら腰を低くし、肩から親とボールの間に体を入れて先に触ります。親は軽く触れる程度にします。
終わったら「今、止まれた?」と1つだけ聞きます。本人が言葉にすると、次の1回で意識が変わります。
親が試合で確かめる見方
奪った回数は相手のうまさにも左右されるので、守備の上達は測りにくいものです。試合で見るなら次の2つです。
- 寄せたあとに止まれているか:相手の前で一度体が止まり、小刻みに足を動かして構えているか。走った勢いのまま足を出していないか
- 抜かれたあとに追っているか:抜かれた直後に振り返って走り出しているか。その場で立ち止まって見送っていないか
どちらも結果に関係なく見られます。抜かれた場面でも、すぐ追っていたら「抜かれたあと、すぐ追ったのがよかった」と伝えてください。追ったことを言葉にしてもらえると、子どもは次も追います。
試合後は「なんで抜かれたの?」を「寄せたとき、止まれた?」に置き換えます。「止まれなかった」なら「パスが転がっている間に行けてた?」と一つ戻って聞くと、原因がタイミングか止まり方かが本人の言葉で分かれます。
パーソナル相談で子どもから出た質問
コーチと1対1で話す相談の時間に、子どもたちから実際に出た質問と、コーチの答えです。学年の目安とポジションは質問した子のものです。
Q. 寄せた瞬間にチョンとかわされます。どのくらいの距離で止まればいいですか。いつプレッシャーに行けばいいのかも分かりません(中学年・サイドの選手)
ボールが動いている間に距離を詰めて、相手がボールに触る前に止まれる状態を作ってください。止まる距離は、足を伸ばしたらぎりぎり届くところです。そこから一発で足を出さずに、相手がトラップした瞬間、ターンした瞬間、浮いたボールを処理する瞬間を待ちます。どれも相手がボールに気を取られる瞬間です。
Q. 自分が上がったあとにカウンターを受けて、2対1になったときはどうすればいいですか(高学年・中盤の選手)
まず抜かれないことです。一発で飛び込まずに、味方が戻ってくるまで時間を稼いでください。それから、上がる前にスコアと残り時間、何人残っていれば守れるかを考えておくと、2対1になる場面そのものが減ります。
まとめ
- かわされる原因は、寄せ始めが遅いことと、走ったまま足を出すこと
- 詰めるのはボールが転がっている間。相手が触る前に、足がぎりぎり届く距離で止まる
- もう一歩詰めるのは、相手がトラップした瞬間・ターンした瞬間・浮き球を処理する瞬間
- 奪えないときは半身で中を切って外へ誘導する。抜かれたらすぐ追い、数で負けていれば時間を稼ぐ
- 親が試合で見るのは「寄せたあとに止まれているか」「抜かれたあとに追っているか」
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