首を振るだけでは足りない。大切なのは「何を見るか」を理解すること
「もっと周りを見て!」と言われていませんか?
子どものサッカーを観ていると、
「後ろから相手が来てる!」
「もっと周りを見て!」
「ボールが来る前に首を振って!」
そんな声を聞くことがあります。
実際、サッカーにおいて周囲を見ることはとても大切です。
相手がどこにいるのか。
味方がどこにいるのか。
どこにスペースがあるのか。
こうした情報が分かっていれば、ボールを受けてから慌てることも少なくなります。
しかしIPPOで子どもたちと話していると、
「周りを見た方がいいことは分かっている。でも、何を見ればいいのか分からない」
という子は少なくありません。
実は「見る力」を身につけるためには、ただ首を振る回数を増やすだけでは不十分なのです。
「首を振ること」が目的になっていない?
例えば、ボールを受ける前に一度後ろを見る。
これはとても良い習慣です。
しかし、こんなケースがあります。
ボールが来る。
その前に一度後ろを振り返る。
そしてボールを受けた瞬間、後ろから来た相手に奪われる。
本人に聞くと、
「ちゃんと見たよ!」
と言います。
確かに、首は振っています。
では、なぜ相手に気づかなかったのでしょうか。
ここで大切なのは、
「見たかどうか」ではなく、「何を見て、何が分かったか」
です。
相手がいた。
味方がいた。
前を向けそうだった。
スペースがなかった。
こうした情報を得て、初めて「見る」という行動がプレーにつながります。
首を振ること自体が目的になると、形だけの動作になってしまうことがあります。
「見る」と「判断する」はセット
例えば、味方からパスを受けようとしている場面を考えてみます。
ボールが来る前に後ろを確認すると、すぐ近くに相手がいることが分かりました。
そこで、
「前を向くのは難しそうだ」
と考える。
そして、ワンタッチで味方へパスを返す。
これは、
見る → 情報を得る → 判断する → プレーする
という流れです。
反対に、後ろを見ても、その情報をプレーに使えなければ意味がありません。
IPPOのサッカーIQクラスでも、「首を振ろう」という動作だけを覚えるのではなく、
「何のために見るのか?」
を子どもたちと一緒に考えます。
相手を見たいのか。
味方を探したいのか。
空いている場所を知りたいのか。
目的が分かると、「見る」という行動がサッカーの判断につながっていきます。
まずは「一つだけ見る」から始めていい
とはいえ、
「相手も、味方も、スペースも全部見よう」
と言われても、最初からすべてを見るのは難しいものです。
特に小学生年代では、ボールを扱うことだけでも多くの集中力を使います。
そこでおすすめなのが、見るものを一つに絞ることです。
例えば、
「今日はボールを受ける前に、後ろに相手がいるかだけ確認してみよう」
これだけでも構いません。
慣れてきたら、
「相手がいるか」
だけでなく、
「どのくらい近いか」
まで見てみる。
さらに慣れれば、
「相手がいるなら、空いている味方はどこか」
まで考える。
このように少しずつ見る情報を増やしていく方が、子ども自身も変化を感じやすくなります。
保護者は「見えていた?」と聞いてみる
試合後の会話でも、見る力を育てることができます。
例えば、子どもがボールを受けた瞬間に相手に奪われた場面。
「だから周りを見なさいって言ったでしょ」
と伝える代わりに、
「ボールを受ける前、後ろの相手は見えていた?」
と聞いてみます。
「見えてなかった」
のであれば、
「じゃあ、いつ見たらよかったかな?」
と一緒に考える。
一方、
「見えていた」
のであれば、
「相手はどのくらい近かった?」
と、もう一歩深く聞いてみます。
すると、
「相手がいることは分かったけど、こんなに近いと思わなかった」
ということもあります。
そうなれば課題は「周りを見ること」ではなく、相手との距離まで把握することだと分かります。
同じミスでも、子どもが何を見ていたかによって原因は変わるのです。
「顔を上げる余裕」がない場合もある
もう一つ忘れてはいけないのが、技術との関係です。
ボールを扱うことに精一杯な状態では、周囲を見る余裕はなかなか生まれません。
ドリブル中ずっとボールを見なければ扱えない。
トラップする瞬間に足元だけに集中してしまう。
その状態で、
「もっと顔を上げて!」
と言われても簡単ではありません。
だからこそ、ボールを扱う技術と、周囲を見る力は切り離して考えるのではなく、一緒に育てていく必要があります。
例えば自主練でも、ただドリブルするのではなく、時々顔を上げて保護者が出した指の本数を答える。
パス練習でも、ボールが来る前に一度後ろを見る。
少し工夫するだけで、「ボールを扱いながら情報を取る」練習になります。
見る力がつくと、プレーに余裕が生まれる
周りを見ることができるようになると、子どものプレーは少しずつ変わります。
ボールを受けてから、
「どうしよう?」
と考えるのではなく、
ボールが来る前から、
「相手がいるからワンタッチで返そう」
「前が空いているからターンしよう」
と準備できるようになります。
つまり、判断する時間をボールが来る前につくれるようになるのです。
これは、身体の大きさや足の速さに関係なく身につけられる大切な力です。
まとめ
「もっと周りを見よう」
という言葉自体は間違っていません。
しかし、子どもにとって本当に必要なのは、首を振るという動作を覚えることではありません。
何を見るのか。
見た情報から何を考えるのか。
そして、その情報を次のプレーにどう使うのか。
ここまでつながって、初めて「見る力」がサッカーの中で生きてきます。
IPPOでは、単に「周りを見なさい」と伝えるのではなく、映像や実際のプレーを通して、「何を見る?」「何が分かった?」「じゃあ、どうする?」を子どもたち自身に考えてもらうことを大切にしています。
最初からピッチ全体を見る必要はありません。
まずは一つ。
「ボールを受ける前に、後ろの相手を確認する」
そんな小さなところから始めてみてください。
少しずつ見えるものが増えてくると、サッカーはもっと考えられるようになり、もっと面白くなっていきます。

